「個人年金保険をやめてNISAにしたほうがいいですか」「貯蓄型の終身保険、もう解約してもいいでしょうか」——50代・60代の相談で、毎月のように聞く質問です。結論から言うと、「解約するかどうか」を先に決めるのではなく、その保険が今いくらで・何年後に・何の役割を持っているかを4点確かめてから決めるのが順番です。解約して後悔するケースの多くは、この確認を飛ばして「利率が低いから」だけで判断したときに起きています。
なぜ「利率が低い=解約」では決められないのか
保険とNISAは、そもそも比べる土俵が違います。NISAは値動きのある投資信託や株式を、税金のかからない枠で持つ「器」です。一方、貯蓄型の保険は、契約したときの予定利率で将来の受取額が決まっている「約束」です。受取額が確定している代わりに、途中でやめると払った額より少ない解約返戻金しか戻らない期間があります。
つまり「今後の増え方」だけを比べると保険が不利に見えても、「今やめたときに失う額」と「保険が持っている保障」を足して考えると、答えが逆転することがあります。
確かめる4つのこと
1. 解約返戻金と、これまで払った額の差
まず保険会社のマイページか、契約内容のお知らせで「現在の解約返戻金」を確認します。払込総額と比べて、いくら下回っているか(あるいは上回っているか)。ここが出発点です。
差がまだ大きい(たとえば払込額の7〜8割しか戻らない)段階なら、その差額は「解約して乗り換えるためのコスト」です。NISAに回した資金がそのコストを取り戻すまでに何年かかるかは、運用次第で決まり、確約はできません。
2. 予定利率と、残りの払込期間
契約時期によって、予定利率は大きく違います。2000年代前半より前に契約した保険は、現在の商品より高い利率で固定されているものが少なくありません。そうした契約は、今やめると同じ条件では二度と入れないため、残す価値が高い場合があります。
逆に、ここ10年ほどの契約で利率が低く、払込期間がまだ長く残っているなら、見直しの候補になります。「いつ契約したか」「あと何年払うか」の2つを契約内容で確認してください。
3. その保険が持っている「保障」の役割
貯蓄型の終身保険には死亡保障が、個人年金保険には受取開始までの死亡給付があります。解約するとその保障も同時に消えます。
特に50代・60代では、「配偶者に残すお金」「葬儀費用」「相続のときに現金で受け取れる仕組み」といった役割を、その保険が担っていることがあります。NISAに置き換えると、この役割は置き換わりません。保障が今も必要かどうかは、保険の入りすぎ3パターンと合わせて確認してください。
4. 解約以外の選択肢——払済・減額・据え置き
「解約か継続か」の二択ではありません。
- 払済(はらいずみ): 今後の保険料の払込をやめ、それまでに積み立てた分で保障額を小さくして契約を続ける方法。解約返戻金はそのまま契約内で増え続けます
- 減額: 保障額を一部減らし、減らした分の解約返戻金を受け取る方法。保険料も下がります
- 据え置き: 払込が終わっている保険なら、そのまま置いて受取時期を遅らせる選択もあります
払込をやめたいだけなら払済で足りることが多く、「解約してNISAに回す」のは、この選択肢を比べたあとでも遅くありません。
税金の面で押さえておくこと
- 解約返戻金が払込総額を上回った場合、その差額は一時所得になります。一時所得には50万円の特別控除があり、控除後の金額の2分の1が他の所得と合算されて課税されます(出典:国税庁タックスアンサー No.1490 一時所得・令和7年4月1日現在法令等)。差額が50万円以内なら、税金はかかりません
- 個人年金保険料や一般の生命保険料は、年末調整・確定申告で生命保険料控除の対象です。平成24年以後の契約では、一般・介護医療・個人年金の各区分で所得税の控除額は最高4万円、合計で最高12万円です(出典:国税庁タックスアンサー No.1140 生命保険料控除・令和7年4月1日現在法令等)。解約すれば、この控除も翌年からなくなります
控除の額そのものは大きくありませんが、「解約で失うもの」の一覧には入れておくべき項目です。
判断の手順(まとめ)
- 解約返戻金と払込総額の差を、契約内容の書類で確認する
- 契約時期と予定利率、残りの払込期間を確認する
- その保険が担っている保障(死亡保障・相続の現金)を今も必要か確認する
- 払済・減額・据え置きと並べて比べ、それでも解約が合うときだけNISAへ回す
当事務所では、お手元の契約内容のお知らせとねんきん定期便をもとに、この4点をご自身の数字で一緒に確認しています。「解約してNISAに回したい」と決めてからではなく、迷っている段階でご相談いただくほうが、選択肢が多く残ります。相談料は何度でも無料です。