「医療保険の保険料が年に何十万円にもなっていて、本当に必要なんでしょうか」——50代・60代の保険の見直しで、よく出る質問です。結論から言うと、医療保険が必要かどうかは、先に公的な「高額療養費制度」でご自身の自己負担がいくらまでに抑えられるかを確認し、そのうえで「それでも足りない部分があるか」で決めます。 順番が逆になって「不安だから入っておく」で続けている方が多く、見直しの余地が出やすい分野です。
先に知っておく公的保障——高額療養費制度
健康保険には、1か月の医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」があります。厚生労働省の案内では、年収約370万円〜510万円の方が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円まで抑えられると例示されています(令和8年8月からの水準。出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」)。上限額は所得区分によって変わるため、ご自身の区分はこのページか、加入している健康保険の窓口で確認してください。
さらに押さえておきたい仕組みが2つあります。
- 多数回該当: 直近12か月の間に高額療養費に該当した月が3か月以上ある場合、4か月目以降は自己負担の上限がさらに下がります。長期の治療ほど、毎月の負担は軽くなる設計です
- 窓口での支払いを上限までに抑える方法: マイナ保険証を利用するか、事前に「限度額適用認定証」を入手しておくと、病院の窓口で支払う額を最初から上限までにできます。一時的に大きな額を立て替える必要がなくなります
2026年8月からの見直しで何が変わるか
高額療養費制度は、令和8年(2026年)8月と令和9年(2027年)8月の2段階で見直されます。低所得の方の負担に配慮しつつ、月額の自己負担上限を所得に応じて引き上げ、その後に所得区分を細かく分ける予定です。多数回該当の金額は維持される方針です(出典:同上)。
つまり、これまでより自己負担の上限は上がる方向です。ただし「上限が上がる=医療保険が必ず必要」ではなく、「ご自身の区分で上限がいくらになるか」を改めて確認したうえで、次の手順で判断します。制度改正の全体像は2026年版 制度改正まとめにまとめています。
医療保険が必要かを決める3つの手順
手順1 「公的保障で足りない部分」を金額で書き出す
高額療養費制度でカバーされないのは、主に次の3つです。
- 入院中の食事代の一部負担、差額ベッド代(個室などを希望した場合)、先進医療の技術料など、制度の対象外になる費用
- 入院や通院で働けない期間の収入の減少(会社員・公務員には健康保険の傷病手当金がありますが、自営業の方にはありません)
- 上限額までの自己負担が、何か月か続いた場合の合計
この3つを、ご自身の働き方と貯蓄で「払えるか・払えないか」に分けます。払える部分に保険は要りません。
手順2 いまの貯蓄で「払える範囲」を決める
自己負担の上限が毎月続いたとしても、それを1年間払える貯蓄があるなら、民間の医療保険がなくても家計は壊れません。逆に貯蓄が少なく、収入が減ると生活費が回らなくなるなら、その不足分にだけ保障を当てる意味があります。「保険に入るか」ではなく「いくら不足するか」で考えると、答えが決めやすくなります。
手順3 いま入っている医療保険が、手順1の不足部分に合っているか確認する
古い医療保険には、今の医療の実態と合わなくなっているものがあります。入院日数は短くなり、日帰り手術や通院での治療が増えました。「入院5日目から給付」「手術の種類が限定されている」といった古い条件のままだと、保険料を払っていても肝心なときに受け取れないことがあります。保険証券か契約内容のお知らせで、給付の条件・1入院の限度日数・通院保障の有無・保険料の払込期間を確認してください。
見直しの方向は、①そのまま続ける ②保障を減らして保険料を下げる ③解約して貯蓄で備える ④不足部分だけ別の保障に入れ替える、の4つです。解約する場合は、解約と同時に保障が消えることと、年齢や健康状態によっては新しい保険に入りにくいことを、先に確認しておきます。解約の判断手順は貯蓄型の保険を解約してNISAに回すべきかとも共通です。
よくある誤解
「高額療養費があるから医療保険は全員いらない」——そうとも限りません。 貯蓄が少ない方、自営業で傷病手当金がない方、差額ベッド代や先進医療の費用を自分で備えられない方には、不足部分に保障を当てる意味があります。
「がんは特別だから、がん保険は別で必要」——高額療養費制度はがんの治療費にも使えます。 ただし治療が長期にわたりやすく、通院中心になること、保険適用外の治療を選ぶ可能性があることから、医療保険とは分けて「長期・通院・適用外」の3点で必要性を考えます。
まとめ
- 医療保険の要否は、先に高額療養費制度でご自身の自己負担上限を確認してから決める
- 制度の対象外の費用・収入の減少・上限額が続いた場合の合計を金額で書き出し、貯蓄で払える部分に保険は当てない
- 2026年8月・2027年8月の2段階で上限は上がる方向。区分ごとの金額を改めて確認する
- いまの医療保険は給付条件が今の医療に合っているかを証券で確認し、続ける・減らす・解約する・入れ替えるの4つから選ぶ
当事務所では、健康保険の種類と所得区分、貯蓄、ご加入中の医療保険・がん保険の証券をもとに、「不足している金額」から保障を組み立て直すお手伝いをしています。「解約していいか」だけでなく「いくら備えれば足りるか」を一緒に確認します。相談料は何度でも無料です。