「変動金利で借りていて、最近上がってきている。このままでいいんでしょうか」——2025年以降、50代の方からの相談で急に増えた質問です。結論から言うと、「変動か固定か」を先に悩むより、返済予定表で①残高 ②残りの返済期間 ③いま適用されている金利、の3つの数字を確認し、そのうえで「続ける・繰り上げ返済・固定への借り換え・退職金での完済」の4つを、老後資金と並べて比べるのが手順です。50代の住宅ローンは、金利の損得だけでなく「退職までに終わるか」「退職金を使うか」という老後資金の問題として考える必要があります。
なぜ50代は「金利の損得」だけで決められないのか
30代・40代の借り換え相談は、金利差で総返済額がいくら減るかが中心です。50代は違います。残りの返済期間が退職後にかかっていれば、年金生活の中から返済を続けることになります。退職金で完済すれば返済はなくなりますが、老後資金が減ります。繰り上げ返済すれば利息は減りますが、手元の現金が減り、病気や介護など急な出費への備えが薄くなります。
つまり50代の住宅ローンは、「いくら払うか」より「いつまでに、何のお金で終わらせるか」を決める問題です。金利の上下はその判断材料のひとつに過ぎません。
先に確認する3つの数字
返済予定表(銀行のマイページや郵送の案内で確認できます)で、次の3つを書き出してください。
- 残高——いま残っている元金
- 残りの返済期間——完済予定の年月と、その時点でのご自身の年齢
- いま適用されている金利——店頭金利ではなく、優遇後の「適用金利」。変動型なら次回の金利見直し時期も
この3つが揃うと、「退職までに終わるか」「退職後に何年・月いくら残るか」が分かります。ここが分からないまま、変動か固定かを議論しても答えは出ません。
変動金利の仕組みで知っておくこと
変動金利型の住宅ローンの多くは、金利が上がってもすぐに毎月の返済額は変わりません。多くの銀行では、返済額の見直しは5年ごと、見直し後の返済額は従来の1.25倍までという上限を設けています(いわゆる「5年ルール」「125%ルール」。採用していない銀行もあるため、ご自身の契約内容で確認してください)。
このため「金利が上がったのに返済額が変わらない」ことがありますが、安心とは限りません。返済額が据え置かれている間は、利息の割合が増えて元金の減りが遅くなり、場合によっては返済額で利息を払いきれない「未払利息」が発生します。返済額が変わっていなくても、残高の減り方が鈍っていないかを返済予定表で確認することが大切です。
4つの選択肢の比べ方
選択肢1 このまま続ける
残りの期間が短い、残高が小さい、金利が上がっても家計に余裕がある——この条件が揃うなら、手数料や手間をかけて動かないのも選択肢です。繰り上げ返済や借り換えには費用や手続きがかかるため、残高が小さいほど効果は限られます。
選択肢2 繰り上げ返済する
手元の現金の一部で元金を減らす方法です。利息が減り、期間短縮型なら完済時期を早められます。注意点は2つ。生活防衛資金(急な出費に備える現金)を減らしてまで行わないこと、そして住宅ローン控除を受けている期間中は、控除で戻る税金と減らせる利息の大きさを比べてから決めることです。
選択肢3 固定金利に借り換える(または固定への変更)
今後の金利上昇への不安を「毎月の返済額が確定する安心」に換える方法です。一般に固定金利は変動より高く設定されているため、毎月の返済額は増えることが多く、借り換えには事務手数料や保証料などの費用がかかります。同じ銀行内で固定型に変更できる場合もあるため、まず現在の銀行に確認します。団体信用生命保険(団信)の条件が変わることがある点にも注意してください。
選択肢4 退職金で完済する
退職後に返済を残さないために、退職金の一部で完済する方法です。返済がなくなる安心感は大きい一方で、老後資金が一度に減ります。完済後の手元資金で、年金だけでは足りない生活費を何年分まかなえるかを先に計算してから決めます。退職金の受け取り方そのものの判断は退職金は一時金と年金どちらで受け取るのが得?も参考にしてください。
判断の手順(まとめ)
- 返済予定表で「残高・残りの期間・適用金利」の3つを確認し、退職時に何年・いくら残るかを把握する
- 変動金利で返済額が変わっていなくても、残高の減り方が鈍っていないかを確認する
- 続ける・繰り上げ返済・固定への借り換え・退職金で完済、の4つを「老後資金がいくら残るか」と並べて比べる
- 繰り上げ返済も完済も、生活防衛資金と老後の生活費を先に確保してから
当事務所では、返済予定表とねんきん定期便、退職金の見込額をもとに、4つの選択肢それぞれで「退職後の手元資金がいくら残るか」を並べてお見せしています。金利の予想は誰にもできませんが、ご自身の数字で比べれば、どの選択肢なら安心して続けられるかは決められます。相談料は何度でも無料です。