50代・60代の相談で多いお金の悩みは、①資産運用の「出口」、②昔入った保険の見直し、③老後の生活費、④親の介護、⑤相続と年金の受け取り方——の5つです。そして共通するのは、悩みの中心が「どう貯めるか」から「どう使うか・どう受け取るか」に変わっているのに、その切り替えに気づかないまま迷っている、という点でした。
この集計について
当事務所はこれまで累計500世帯のご相談をお受けしてきました。今回はそのうち、相談記録が整理できている225世帯を集計し、50歳以上の60世帯に絞って相談テーマを数えています。順位も件数も、実際の記録から数えた実数です。個人が特定されないよう、事例はすべて一般化しています。
1位 資産運用——始め方より「終わらせ方」に悩んでいる(60世帯中58世帯)
意外に思われるかもしれませんが、50代・60代でもいちばん多い相談は資産運用です。ただし中身が若い世代と違います。
NISAなどの制度は、すでに始めている方が少なくありません。悩みの中心は「いつ・どう取り崩すか」という出口の話です。退職金や相続で受け取ったまとまったお金を、一括で投資してよいのか、分けたほうがよいのか。増やす話より「受け取ったお金の置き場所」に迷っている方が目立ちます。
世の中の情報は「始め方」「貯め方」に偏っているため、この段階になると参考になるものが急に見つからなくなるのです。
2位 保険の見直し——「若い頃のまま」が続いている(51世帯)
2番目に多いのが保険です。典型的なのは、子育て期に入った死亡保障中心の保険を、お子さまの独立後もそのまま続けているケース。保障の中身を把握しないまま、保険料だけ払い続けている方が多くいらっしゃいます。
もうひとつ、この世代ならではのつまずきが「満期」です。60歳前後で満期を迎える貯蓄型の保険があるのに、その受け取りと老後資金の計画がつながっていない。また、持病や既往歴で新しい保険に入りづらくなり、見直しの選択肢が狭まっている点も、若い世代にはあまり見られない特徴です。
3位 老後の生活費——試算して初めて「赤字額」が見える(38世帯)
「老後にいくら必要か」を具体的に計算したことがないまま、漠然とした不安だけを抱えて相談に来られる方がとても多いです。実際にライフプランを試算して、初めて老後の年間の赤字額を具体的に知り、そこから対策の話が始まる——というのがよくある流れです。
不安の正体は、たいてい「金額が分からないこと」そのものです。数字にすると、必要な備えは思ったより小さいこともあります。
4位 親の介護・認知症——「口座が止まる」リスクを想定していない(11世帯)
50代になると、自分のお金と並行して親のお金の悩みが増えてきます。見落とされがちなのが、親名義の口座から介護費用を立て替え・引き落としているケース。認知症などで口座が凍結されると、その支払いが止まってしまうリスクを想定できていない方がほとんどでした。
「介護が不安」という声は多いのに、いくら・いつ必要になりそうかを試算した方はごくわずか、というのも現場で感じる実態です。
5位(同率) 相続・贈与と、年金の受け取り方(各10世帯)
同じ件数で並んだのがこの2つです。
相続・贈与では、親から受け取ったまとまった資産の置き場所に迷ったまま時間が過ぎているケースや、二次相続(両親のうち後に亡くなった方の相続)の税負担を一度も試算していないケースが目立ちました。
年金では、繰上げ・繰下げ受給を「早くもらったほうが得では」という感覚で判断しようとしている方、ねんきん定期便を確認しておらず想定額と実際が大きくずれていた方、定年から受給開始までの収入の空白期間を試算していない方が典型です。
なお件数こそ少ないものの、退職金の受け取り方(一時金か分割かで税金が大きく変わる)も、退職直前まで先送りされがちな重要テーマでした。
まとめ
- 50代・60代の悩みの中心は「貯め方」ではなく「使い方・受け取り方」に変わる
- つまずきの多くは、知識不足より「一度も試算していないこと」が原因
- 資産運用・保険・年金・相続はつながっている。ひとつずつ別々に考えると判断を誤りやすい
当事務所では、こうしたご相談を毎月およそ10世帯お受けしています。相談料は何度でも無料です(複数の保険会社と募集代理店委託契約を結ぶ乗合代理店に所属しており、保険会社等から支払われる手数料で運営しているためです)。