「会社の退職金とは別に、企業型DC(確定拠出年金)やiDeCoもある。これ、どう受け取ればいいんですか」——50代の会社員・公務員の方から、退職金と並んで多い質問です。結論から言うと、DC・iDeCoは「一時金か年金か」だけでなく、「会社の退職金と何年あけて受け取るか」で税金が変わります。そして2026年1月以後は、DCの一時金を先に受け取る方法が使いにくくなりました。 まずご自身の退職所得控除の枠と、退職金・DCそれぞれの受け取り時期を並べて確認するのが出発点です。
受け取り方は3通り。税金のかかり方が違う
iDeCo・企業型DCの老齢給付金は、60歳から75歳になるまでの間で受け取り開始時期を選べ、受け取り方は次の3通りです(出典:iDeCo公式サイト「給付について」)。
- 一時金: 75歳になるまでの間に一括で受け取る
- 年金: 5年以上20年以下の有期年金として受け取る(運営管理機関によっては終身年金も可)
- 併用: 一部を一時金、残りを年金で受け取る
税金の区分は、会社の退職金と同じ考え方です。
- 一時金は「退職所得」とみなされ、退職所得控除(勤続年数——DCの場合は掛金を払った期間——に応じた非課税枠)が使えます(出典:国税庁タックスアンサー No.1420 退職金を受け取ったとき・令和7年4月1日現在法令等)
- 年金は公的年金と同じ「雑所得」として、公的年金と合算したうえで公的年金等控除を差し引き、毎年課税されます(出典:国税庁タックスアンサー No.1600 公的年金等の課税関係・令和7年4月1日現在法令等)
退職所得控除の式は、勤続(加入)20年以下なら「40万円×年数(80万円に満たない場合は80万円)」、20年超なら「800万円+70万円×(年数−20年)」です。控除を超えた部分も2分の1だけが課税対象になります。会社の退職金についての詳しい説明は退職金は一時金と年金どちらで受け取るのが得?をご覧ください。
ここが落とし穴——退職所得控除は「退職金とDCで別々に2回」使えるとは限らない
会社の退職金とDCの一時金を、どちらも退職所得控除を丸ごと使って受け取れれば一番有利に見えます。ところが、近い時期に2つの退職所得を受け取ると、勤続期間が重なっている部分の控除は1回分しか認められません。このときの「近い時期」の範囲が、2026年から広がりました。
国税庁の定めでは、次のように整理されています(出典:国税庁タックスアンサー No.2732 退職手当等に対する源泉徴収・令和7年4月1日現在法令等)。
| 受け取る順番 | 重複期間の調整が入る範囲 |
|---|---|
| 先にDC一時金 → 後から会社の退職金 | 従来は「前年以前4年内」。令和8年(2026年)1月1日以後に支払を受けるDC一時金は「前年以前9年内」 |
| 先に会社の退職金 → 後からDC一時金 | 「前年以前19年内」 |
つまり、これまでは「60歳でDCを一時金で受け取り、5年あけて65歳で退職金」と並べれば両方で控除を使えましたが、2026年以後に受け取るDC一時金は、退職金との間隔を10年あけないと同じ扱いになりません。60歳でDC、70歳で退職金という並びは現実的でないため、「DC一時金を先に受け取って控除を2回使う」という方法は、多くの方にとって使いにくくなったと考えてください。
一方、「先に退職金、あとからDC一時金」の順番では、調整の範囲が19年内と以前から長く、この並びで控除を2回使うのはもともと難しい設計です。
判断の手順
ステップ1 退職所得控除の枠と、退職金+DCの合計額を比べる
会社の退職金見込額とDC・iDeCoの資産残高を足して、ご自身の退職所得控除の枠と比べます。合計が枠に収まるなら、同じ年に両方を一時金で受け取っても課税されない場合があります(同じ年に複数の退職所得を受け取るときは、合算して1回の退職所得として計算します)。この場合、順番を工夫する必要はあまりありません。
ステップ2 枠を超えるなら、「超える部分」をどう受け取るかを考える
合計が枠を超える場合の主な選択肢は次の3つです。
- DC・iDeCoの一部または全部を年金形式にして、毎年の雑所得として受け取る(公的年金の受給開始前の60〜64歳に受け取れば、合算される公的年金がないぶん所得が小さくなる場合があります)
- 併用にして、枠に収まる分だけ一時金、残りを年金にする
- 受け取り開始を遅らせて、公的年金の受給時期や再雇用の収入と重ならないようにする(開始は75歳になるまで選べます)
ステップ3 受け取る年の「他の所得」を並べる
年金形式は毎年の所得になるため、再雇用の給与や公的年金と重なる年は税金だけでなく、国民健康保険料・介護保険料にも影響します。60〜64歳・65〜69歳・70歳以降で、何の収入がいくらあるかを年表にして並べると、どの年にDCを受け取るのが負担が軽いかが見えてきます。
先に確認しておくこと
- 通算加入者等期間: 加入期間が10年未満だと、受け取り開始できる年齢が61〜65歳に繰り下がります(8年以上10年未満なら61歳、6年以上8年未満なら62歳、4年以上6年未満なら63歳、2年以上4年未満なら64歳、1か月以上2年未満なら65歳。出典:iDeCo公式サイト「給付について」)
- 会社の退職金の支給時期と制度の種類: 確定給付企業年金(DB)がある場合は扱いが別なので、退職金規程や人事部の案内で確認してください
- 転職・退職でDCを放置していないか: 企業型DCを持ったまま退職し、手続きしていないと資産が自動移換されて運用されない状態になります。受け取り方を考える前に、どこにいくらあるかを確認します
まとめ
- DC・iDeCoの受け取り方は一時金・年金・併用の3通り。一時金は退職所得控除、年金は毎年の雑所得
- 2026年1月以後に受け取るDC一時金は、退職金との間隔が「9年内」まで調整の対象になり、先にDC一時金で控除を2回使う方法は使いにくくなった
- 出発点は「退職所得控除の枠」と「退職金+DCの合計額」の比較。枠を超える分をどう受け取るかを、受け取る年の他の所得と並べて決める
当事務所では、退職金の見込額・DCの残高・ねんきん定期便をもとに、受け取り方の組み合わせごとの違いをご自身の数字で比べるお手伝いをしています。退職の2〜3年前までにご相談いただくと、受け取り時期の選択肢が多く残ります。相談料は何度でも無料です。