2026年の制度改正はいろいろ話題になっていますが、50代・60代の家計に実際に影響するのは4つです。①働きながら受け取る年金の基準額、②パート収入の「103万円の壁」、③高額療養費の自己負担上限、④医療保険料への子育て支援金の上乗せ。そしてNISAは、2026年に変わりません。
この記事では、この4つ+NISAの現状を「誰に・いつから・何が変わる・やるべきことはあるか」の4点だけで整理します。掲載しているのは、省庁・公的機関の一次情報で確認できた内容だけです(出典は記事末尾)。
なお、このページは毎年同じ場所で更新します。来年以降も「今年は何が変わるのか」はこのページを見に来てください。
1. 働きながら受け取る年金——カットされにくくなります
誰に: 60代で厚生年金に加入して働きながら、老齢厚生年金(特別支給を含む)を受け取っている方。
いつから: 2026年4月。
何が変わる: 働いて受け取る給与と年金の合計が一定額を超えると、超えた分の半額の年金が支給停止される仕組み(在職老齢年金)があります。この基準額が、月62万円から月65万円に引き上げられます。仕組みそのものは変わりませんが、年金がカットされ始めるラインが上がります。
やるべきこと: 「年金が減るから」と勤務時間や収入を抑えてきた方は、働ける範囲が広がります。給与改定や勤務時間を見直すタイミングで、一度再計算してみてください。
2. パート収入の「103万円の壁」——2026年・2027年分は178万円に
誰に: パートで働く方(配偶者の扶養内で働く50代・60代の方、定年後の再雇用で働く方を含む)。
いつから: 2026年分(2026年1〜12月)の所得税から。毎月の給与天引き(源泉徴収)への反映は2027年1月からで、2026年分の差額は年末調整で精算されます。
何が変わる: 所得税がかからない給与収入のラインが、103万円から178万円に上がります。基礎控除と給与所得控除の引き上げによるものです。ただし2点、注意があります。1つめ、178万円という水準は2026年分・2027年分限定の時限措置を含んだ数字で、2028年分以降はラインが下がる見込みです。2つめ、これは所得税だけの話です。社会保険料がかかり始める「106万円・130万円の壁」は別の制度で、今回の改正後もそのまま残ります。
やるべきこと: 103万円を意識して勤務時間を抑えてきた方は、働き方を見直す余地があります。ただし「所得税の壁」と「社会保険の壁」を分けて考えること。178万円ラインが時限措置込みである点も踏まえて、2028年以降に前提が変わりうることを頭に置いて判断してください。
3. 高額療養費——自己負担の上限が段階的に上がります
誰に: 公的医療保険に加入しているすべての方。特に、持病やがんの治療で高額療養費制度を使っている方・使う可能性の高い方。
いつから: 2026年8月に第1弾、2027年8月に第2弾の2段階。
何が変わる: 医療費の自己負担に月ごとの上限を設ける高額療養費制度で、所得区分に応じて月額の自己負担上限額が引き上げられ、あわせて年間の上限が新設されます。2027年8月からは所得区分がさらに細かくなり、年収200万円未満の課税世帯では「多数回該当」(直近12か月で3回以上上限に達した場合に4か月目以降の負担が軽くなる仕組み)の金額が25%引き下げられます。負担が増える方と軽くなる方の両方がいる改正です。
やるべきこと: 治療中の方は、ご自身の所得区分で上限がどう変わるかを確認してください。また、医療保険・がん保険の保障内容を「公的保障で足りない分を補えているか」という視点で点検するきっかけにもなります。金額の詳細は、記事末尾の厚生労働省のページで確認できます。
4. 医療保険料に「子ども・子育て支援金」が上乗せされます
誰に: 健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度に加入しているすべての方。子育てが終わった世帯も、年金生活の方も対象です。
いつから: 2026年4月分の保険料から(会社員は5月の給与天引きから、国民健康保険は4月分から)。
何が変わる: 医療保険料に子育て支援のための負担金が上乗せされます。会社員などの被用者保険では、2026年度の支援金率は標準報酬月額の0.23%で、その半分を本人が負担します(残り半分は勤務先の負担)。
やるべきこと: 特別な手続きは要りません。ただ、給与明細や保険料の通知に新しい項目が増えるので、「これは何?」と慌てないよう知っておいてください。老後の家計を試算するときは、この負担も含めて見込んでおくと確実です。
NISAは変わりません——「高齢者向けNISA」は今回見送り
誰に: NISAを使っている方・これから始める方。
何が(変わらないか): 2025年の春頃、「高齢者向けに毎月分配型の投資信託をNISAで買えるようにする」という構想(いわゆるプラチナNISA)が報道されました。しかし2025年12月に閣議決定された税制改正大綱には、この内容は盛り込まれていません。年間投資枠(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)も非課税保有限度額(1,800万円)も、2026年時点で変更はありません。
やるべきこと: 報道を見て「新しいNISAを待ってから始めよう」と考えていた方は、待つ理由がなくなりました。現行制度のまま、ご自身の計画で判断して大丈夫です。
話題になっているが、50代・60代にはあまり関係ない改正
編集の判断で、次の項目はこの記事の本編から外しました。ニュースで見かけても、多くの50代・60代の家計には直接影響しません。
- NISAの未成年口座の新設(2027年〜): 0〜17歳の子・孫本人の口座の話です。お孫さんへの資金援助を考えている方にだけ、間接的に関係します
- 大学生年代の子の扶養の年収要件の緩和: 大学生の子を扶養している現役世代向けです
- 法人税関係の改正: 会社経営者・事業主向けで、給与所得者・年金生活者には直接関係しません
- 暗号資産の課税方式の見直し(検討中): 暗号資産に投資している方だけの論点です
まとめ
- 2026年に50代・60代の家計へ実際に影響するのは、在職老齢年金・パート収入の壁・高額療養費・支援金の上乗せの4つ
- 「壁」の改正は所得税だけの話。社会保険の106万円・130万円の壁は残るので、混同しないこと
- NISAは変わらない。制度を待たず、ご自身の計画で判断してよい状況です
制度は変わっても、「わが家の場合はどうなのか」は個別の数字で試算しないと分かりません。働き方の見直し・保険の点検・NISAの始めどきなど、ご自身のケースに引き寄せて考えたいときは、お気軽にご相談ください。相談料は何度でも無料です(複数の保険会社と募集代理店委託契約を結ぶ乗合代理店に所属しており、保険会社等から支払われる手数料で運営しているためです)。
出典(一次情報・2026年8月18日確認)
- 厚生労働省「年金制度改正法(令和7年法律)の概要」(在職老齢年金)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(基礎控除・給与所得控除、NISA関連の確認)
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度」